第2回 瀧波ユカリ×アルテイシア対談

ヘビーなこともストレスフルなことも楽しくパワフルに切り返すアルテイシアさんの新連載!
毎回ゲストの方とジェンダー観やフェミニズムについて語ります。第2回も&Sofaでもおなじみ瀧波ユカリさんです! おかしいと思うことは子どもの頃からたくさんあったけど、フェミニズムやジェンダーという言葉で定義づけられると知らなかった、という瀧波さんのフェミニズムへの目覚めはいつだったのでしょうか?

 

フェミニズムの芽が出たのは?

アル:私は広告会社に入社した後、先輩から田嶋陽子さんの本を紹介されたことがフェミニズムとの出会いです。

当時はセクハラパワハラのセパ両リーグな職場で、セクハラに遭っても笑顔でかわせと刷り込まれて、セクハラに遭うのは自分のせい、自分が悪いんだと思ってました。

でもフェミニズムを知って、足を踏んでくる方が悪いとわかったし、足を踏むなと抗議できるようになったし、踏んでくる人を避けられるようにもなった。

対談集『田嶋先生に人生救われた私がフェミニズムを語っていいですか!?』で田嶋さんが「フェミニズムは人権の話だから「自分はこんなひどいことされていい人間じゃない」と気づくのが始まり。だから怒れる自分に誇りをもっていい。怒れることは、それだけの感性や知性や能力があるってことだから」と語ってますけど、私も「怒ってよかったんだ」と気づけたんです。

瀧波さんはいつフェミニズムに目覚めましたか?

瀧波:おかしいと思うことは子どもの頃からたくさんありました。でもそれがフェミニズムやジェンダーという言葉で定義づけられてることは全然知らなくて。

私は24歳の時に投稿作がそのまま連載になって、漫画家としてのキャリアがスムーズに進んだんです。

もちろん漫画家としての苦労はありましたが、通勤中に痴漢に遭うとか、会社で理不尽なことを経験したりはなくて。社会の中で自分以外の女性が被っている被害が全然見えてなかったんです。

分岐点となったのは、出産後ですね。30歳で出産して、子どもを預けて働こうとすると、社会に入っていくしかなかった。

アル::出産後にフェミニズムに目覚める女性は本当に多いですよね。

瀧波:そうそう。その頃に並行してTwitterを始めて、匿名の女性たちの性差別の経験談が目に入るようになりました。みんな同じことを感じているとわかって、フェミニズムを誤解していたことにも気づいたんですよ。

アル:まさに「パーソナル・イズ・ポリティカル(個人的なことは政治的なこと)」。

自分が苦しいのは自分のせいじゃなく、政治や社会のせいなんだと気づくと、世界の見え方が変わりますよね。

#MeToo以降、SNSで女性たちが声をあげるようになって、その影響はすごいと思います。

うちは選択的子なし夫婦なのですが、日本で子育てする大変さや理不尽さは、Twitterで発信してくれる人たちのおかけで知れました。だから一人ひとりが声を上げることって、ものすごく意味がありますよね。

 

ブス扱い=物言う女が気に入らない

アル:私はルッキズムにも苦しめられて、過食嘔吐をしていた過去もありました。でも40歳を超えて、自意識がゆるゆるになったんですよ。

昔は「こんな服着てたらどう思われるかな」とか気になったけど、今は「服、着てたっけ?」と不安になる(笑)。あと中年になると「脚が太い」よりも「膝が痛い」の方が一大事だし、体重よりも骨密度が気になる。

自分のことを見た目で評価しなくなると、他人のことも評価しなくなって、ルッキズムからの解放を感じました。

瀧波:私も年齢と共に自分に似合うものを見つける感覚を楽しんでいて、人からどう見られるかは考えなくなりました。昔はどうしてルッキズムの呪いにかかってたんだろう?って振り返ることがあります。

私は子どもの頃から主張がはっきりしていたので、小中学校のときは男子からブス扱いをされてたんです。もちろん傷ついたんですけど、心のどこかで「私の顔が気に食わないんじゃなくて、言ってることが気に入らないんだろうな」とわかってました。

アル::たしかに。今もフェミニストの容姿をディスる男性は多いけど、物言う生意気な女が気に入らなくて、口を塞ぎたいんですよね。

瀧波:そうそう。高校生のときにジャニス・ジョプリンの音楽を好きになって、ライナーノーツを読んでいたら、ジャニスが高校生のときに校内のブスコンクールで一位をとった話が出てくるんです。そんな高校潰れてしまえ!って思うじゃないですか。

でも当時は音楽ライターのほとんどが男性で、彼らは何の疑問を持たずに「ブスのコンプレックスを発揮して、いい歌を歌った」みたいなことを書いてるんです。

アル::バカじゃねえか。サブカルクソおじさんですね!

瀧波:調べていくと、保守的な地域で生まれたジャニスが、色々なことに違和感を持って発言していたこともわかって。やっぱり物言う女がブス呼ばわりされるだけのことじゃん!って。

ルッキズムの正体は、男性の加害性や加害性そのものに対する無頓着さだと思うんですよ。

40代になって自分の容姿が気にならなくなるのも、わざわざブスと言いにくる男がいなくなるから。元から言う奴がいなかったら、私たち自由だったじゃん!って思うんですよ。

アル::ほんとそう。容姿をディスる人がいなければ、容姿に悩む人もいなくなるんですよ。

いじめもそうですが、いじめられる側に問題があるんじゃなく、いじめる側に問題がある。だからその加害性を問題視しろって話ですよね。


次回、第3回では、友達とのジェンダーギャップや、男性が女性(パートナー)の意見を聞かない&育児に当事者意識がない、など女性の不満が生まれるのは男性の性差別意識が関係しているのでは?ということを語ります。


構成:雪代すみれ

 

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瀧波ユカリ

瀧波ユカリ

漫画家。札幌市に生まれ、釧路市で育つ。日本大学芸術学部を卒業後、2004年に24歳のフ リーター女子の日常を描いた4コマ漫画『臨死!!江古田ちゃん』でデビュー。現在、 『わたしたちは無痛恋愛がしたい』 を連載中。そのほか、「ポリタスTV」にて、「瀧波ユカリの なんでもカタリタスTV」にも出演中。