毒親の呪いから解放されるまで ライフハック編

『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』『モヤる言葉、ヤバイ人』などで知られるアルテイシアさん。毒親問題からフェミニズムまで、ヘビーな内容もストレスフルな現象もコミカルに楽しく分析してくれるコラム。今回は、毒親育ちのアルテイシアさんが生きやすくなるためにやった方法とは?

 

(前回のあらすじ)夫に出会ってだいぶ生きやすくはなったが、他にもいろいろやってみた。

いろいろやってみたなかで効果的だったものを紹介したい。

自己啓発セミナーに通ったり、膣にパワーストーンを入れるのは金がかかるが、以下はいずれもタダである。なので興味のある方は試してほしい。

 

■毒親デトックス

過去の傷つき、苦しみ、怒り、悲しみ…といった感情を言葉にして吐き出す。やっぱりそれが一番効くと思う。

私の場合は自分でも飽きてゲップが出るぐらい、毒親について書いたり話したりするうちに「親なんかどうでもええわ」という気分になってきた。

どうでもよくなるとは、親の存在が小さくなることだ。

恐怖の毒毒モンスター的な存在だった親が、不完全でちっぽけな人間に見えてくる。すると毒親の呪い、すなわち支配から抜け出しやすくなる。

私は毒親について書くことがデトックスになったし、それを読んだ方から共感の声をもらうことにも癒やされた。

「同じように戦う仲間がいるんだ」と励まされたし、私の文章を読んで救われたという感想をもらって「自分の傷が他人を癒やす」経験ができたことも大きかった。

毒親デトックスしたい方は、安心して吐き出せる場所を見つけてほしい。ネットで毒親コミュニティを探してもいいし、AC(アダルトチルドレン)の自助グループなどにつながるのもいいと思う。

女性が安心して何でも話せる場所を作りたい。そんな思いから、私は「アルテイシアの大人の女子校」という読者コミュニティを作った。

女子校で毒親について話したり、七夕に「毒親が早く死にますように」と短冊を飾ったりするうちに「毒親と絶縁できた」「生きづらさが減った」という声がメンバーから寄せられる。

毒親と1人で戦うのはしんどいので、支え合える仲間を見つけてほしい。

信頼できるカウンセラーに相談するのもおすすめだ。今はオンラインカウンセリング等もあるので、自分に合うカウンセラーを探してほしい。

毒親やAC関連の書籍を参考にするのもアリだ。いろんな書籍が出ているので、自分に合うものを見つけてほしい。

私は毒親フレンドに田房永子さんの著書や、『毒親の棄て方 娘のための自信回復マニュアル』(スーザン・フォワード著)をよく紹介している。

毒親デトックスする際は、心身の調子と相談しながら行おう。調子が悪い時に毒親のことを考えるとフラッシュバックが起こったり、メンタル崩壊しそうになったりするので、無理は禁物でござる。

 

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■中二病療法

「俺の中に眠る『もう一人の俺』」という中二病のアレである。

私は夫と結婚した後も、定期的に「寂しさ発作」に襲われていた。特に理由はないのに、無性に寂しくて死にそうになるのだ。

そのたびに「今の私にはパートナーも友人もいて孤独じゃないのに、なんで?どっかおかしいんじゃないの?」と不安になりつつ、ある日「コイツの正体をつきとめてやる」と自分の心を深く見つめてみた。

すると「右腕に封印したアイツ」は出てこなかったが、「俺の中に眠る『もう一人の俺』」を発見した。

その正体は、過去の寂しかった自分だった。

親に愛されなかった自分、頼る家族のいなかった自分が「私はまだここにいる!寂しいよ、ウエーン」と泣いていたのだ。

それに気づいて「そうか、そりゃ寂しかったね、でももう大丈夫、もう一人じゃないから」と対話するうちに、気づくと発作が起こらなくなっていた。

毒親育ちは親に感情を無視されて、否定されて生きてきた。おまけに自分まで「べ、べつに寂しくなんかないんだもんね!」と感情を無視してしまうと、ふとした瞬間にあふれて発作が起こるんじゃないか。

そこで今の「状況」じゃなく「感情」に注目して「これって過去の自分の声かもな?」と耳を傾けると、心が落ち着いてくる。

ちなみに私はイカのぬいぐるみを「もう一人の俺」に見立てて「よしよし、いい子いい子」と抱きしめて撫でていた。このように、自己投影できるグッズを使うのもアリだ。

 

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■ジョースター療法

ジョナサンの父、ジョースター卿の「逆に考えるんだ」というアレである。

毒親育ちは「おまえはダメだ」と否定されて育つため「ワイはダメや」と自己肯定感が息してない状態になりがちだ。

たとえば、私は「おまえみたいなガサツな女は結婚できない」と親によくディスられていた。

たしかに私はガサツな性格だが、そのぶん夫が部屋を散らかしても気にならない。つまり「ガサツだから結婚できない」は「大らかだから夫婦円満」に言い換え可能なのだ。

また私は整理整頓や規則正しい生活が苦手で、ていねいに暮らせないことがコンプレックスだった。

けれども夫に「ていねいな暮らしは狙撃されやすい」「部屋に障害物が少ないし、毎日決まった行動パターンだから敵に動きを読まれやすい」と言われて「ていねいな暮らしが苦手だから、狙撃されにくいのさ」と思えるようになった。

うちの夫はうんこを漏らしても褒めてくれる、アナル&ガッバーナな人物である。

そのおかげで精神が安定したが、過去の自分が可哀想だったなと思う。自分が自分の親になったつもりで、自分を褒めてあげればよかった。

ジョースター療法で逆に褒めるトレーニングを続けると、思考のクセが変わってくるので試してほしい。

 


■寝起きほめほめ大作戦

これは田中圭一さんの著書『うつヌケ』で紹介されていた方法だ。

『朝起きぬけで意識がハッキリしない時って、顕在意識と潜在意識の境界があいまいになっているので、潜在意識に言葉がスッと入ってしまいやすいのさ』とのことで、寝起きに自分を褒める言葉を唱えることで、肯定的自己暗示ができるらしい。

なにぶん寝起きなので「私最高…めっちゃ最高…」とカサカサの声しか出ないが、私も毎日続けるうちに「最高かもな?」という気分になってきた。こちらもタダで簡単にできるので、試してほしい。

 

■WANTとMUSTの整理術

毒親育ちは親から「~すべき/~すべきじゃない」とプレッシャーをかけられて育つ。

そのためMUST(~すべき/すべきじゃない)を優先して、WANT(自分は~したい/したくない)がわからなくなりがちだ。また自分がしたいことや好きなことをするのに罪悪感を抱くようになったりもする。

WANTとMUSTがごっちゃになりがちな人は、整理するクセをつけよう。

その際は「Don’t think. FEEL(考えるな、感じろ)」というブルース・リーの言葉を唱えよう。自分が心の底から「楽しい」「嬉しい」と感じることがWANTである。

しかし自分の感情を押し殺してきた人は、感じることが苦手になりがちだ。そんな場合は「もし親が死んだらどうしたい?何がしたい?」と考えるのも手である。

自分は本当は何がしたいのか?どう生きたいのか?がわからないと、迷子になって生きづらい。

「親や周りの期待に応える“いい子”でいなきゃ」と刷り込まれていると、自分の人生を生きられない。
毒親フレンドは「バッドガールになったるわい!!」ぐらいの心意気で、イマジナリーヌンチャクを振り回そう。
以上のライフハックを実践するうちに、私は気づくと生きやすくなっていた。一朝一夕で変わるものじゃないので、焦らず気長に続けてほしい。

また私が生きやすくなった理由として、フェミニズムとの出会いがある。

私はフェミニズムのおかげで、奪われた自尊心を取り戻すことができた。かつジェンダー視点から親の人生を理解できたことが、呪いの解放にもつながった。

というわけで次回は「毒親の呪いから解放されるまで フェミニズム編」をお届けします。

この続きは単行本に収録されています

 

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