人生悲喜交々、とにかく瀧波ユカリに相談だ(5)

『わたしたちは無痛恋愛がしたい』第4巻発売記念のお悩み相談コラム第5弾!

 

育児について悩んでいます

 

はじめまして。『上田と女が吠える夜』でユカリさんを拝見して、「あ、この人絶対面白い人だ」と思い著書を買い始めました。想像を超える面白さんで興奮がやまず…なんで今まで知らなかったのか!と悔しいです。

私の悩みは…育児です。重めの話なので読むだけで疲れさせてしまうかもです。ちょっと吐き出させていただきます。

私は44歳で息子が6歳(年長)なのですが、息子は知的障害(中程度)を伴う自閉症です。自閉症といっても、ほんっとに千差万別で(一人ひとりのオリジナルブレンドと言われています)コミュニケーションや集中力に長けた子もいれば、おっとりした子、聴力や感覚が過敏だったり…息子は自分の簡単な要求は言語で伝えられますが、質問に答えたり、今日あったことなどを思い出して話すことが出来ません。(無視、スルーです)

端的に悩んでいることを言うと子供を愛せないんです。でも育児放棄してるとか、ひどい母と思われたくなくて、必死であれこれ勉強して動いて世話していますが、自閉症の子は母を「母だから好き!」という感覚ではないそうなんです。「要求に安定して答えてくれるから好き」なんだそうです。

だから私が疲れて数日旅行に行っても、祖母&夫で十分なんです。家に二人でいるととにかくしんどいんです。自分のことは自分のペースで何もできない。常に息子からの要求に応えないと倍返しになる(延々泣いたりパニックになったり)。だから「はいはい」と死んだ顔で要求に応える日々。高齢で産んだ私が悪い、投げ出すことは許されない(そんな気はないですが)。

とにかく疲れた、それに尽きます。人間同士の愛着形成ってきっと相互的な会話などが重要だと思うのですが、それがないんです。常に私の独り言です。「ブラッシュアップライフ」のドラマ見てましたか? わたしはあれを観て、もう一度やり直せるなら「子供を産むな、お前の手には負えない子が出てくるぞ」と自分に伝えると思うんです。そんなことを考える自分にも疲れたし、健常な子のママたちとは会話が全くあわずに縁を切ったし、もう疲れました。(お受験や、習い事とか無縁すぎなので。)来春からの就学先が支援学校です。 昔でいう養護学校のことです。ちょっと落ち着きない、くらいの個性の範疇の子は行きません。

こういう話をすると、健康ならそれでいいじゃないか、みたいな話になったりするんですが、さんまさんでもあるまいし、「生きてるだけで丸儲け」の精神にはなれません。手術をするような病気のお子さんのお母さんたちには鼻で笑われると思いますが。

暗い話すみません。ここまで読んでくださってありがとうございました。

(はらちゃん・40代)

 

はらちゃんさん、いや「さん」は取りましょうか、はらちゃん、お悩みを送ってくださってありがとうございます。読ませてもらって、最初は「そうか…」と言葉が出てきませんでした。私が何を言えるだろうかと、2回読み返し、3回読み返し…としているうちに、はらちゃんの文章のリズムがなんだか小気味よく感じられて、最初に読んだ時の印象とだいぶ変わりました。一言で言うなら「この人絶対面白い人だ」。そう、はらちゃんが書いた私の印象と同じです! お互い面白いと思い合ってる関係、ちょっといいですね。

「面白い」ってどういうことかというと、たくさん考えてわかったことを自分の言葉で表現できるってことです。はらちゃんは、息子さんの性質を短い言葉でわかりやすく伝えている。現在感じている悩みや問題点についても、簡潔に言語化できている。そして(はらちゃんは意識してないかもだけど)絶妙なさじ加減でユーモアを入れている。これは一朝一夕で書ける相談文ではないですね。たくさんの行動と思考を積み重ねてきた、相手を思う心のある、優しい人の書いたもの。「必死であれこれ勉強して動いて世話している」という短い一文はまぎれもなく真実だろうし、はらちゃんの面白さの秘訣でもあるんだな。そんなふうに思いました。

そんなはらちゃんからの相談文は、「どうしたらいいですか」などといった質問の形になっていないので、私の答えが必要かどうかはわからないけれど。私はただただ、はらちゃんのいるおうちに向かって手を振りたいなと思いました。たぶん私と同い年で、四十数年ずっと一生懸命にやってきて、だからとっても疲れていて、それでも「疲れた」以上のことは言わずに、きっと今日も努力と忍耐を重ねているはらちゃんの目に、遠くから手を振る私が映ったとして、それは何にもならないかもしれないけれど、それでも。

そしてひとつだけ、伝えたいことがあります。はらちゃんが数日旅行に行っても大丈夫なら、どんどん行きましょうね。いっそ毎月。たくさん気晴らしをして、たくさんおいしいものを食べて、静かなホテルのベッドでたくさん寝て、元気になってくれたらいいな。私は時々サイン会なんかをやったりするので、はらちゃんが来てくれたらいいな。

その時は「はらちゃんです」って教えてくださいね。1年後か、5年後か、10年後か、もっと先か。いつでもいいです。私は描き続けることで、はらちゃんに手を振り続けます。そして、はらちゃんに会える日を楽しみに待っています。

 

次回の更新をお楽しみに!

瀧波ユカリ

瀧波ユカリ

漫画家。札幌市に生まれ、釧路市で育つ。日本大学芸術学部を卒業後、2004年に24歳のフ リーター女子の日常を描いた4コマ漫画『臨死!!江古田ちゃん』でデビュー。現在、 『わたしたちは無痛恋愛がしたい』 を連載中。そのほか、「ポリタスTV」にて、「瀧波ユカリの なんでもカタリタスTV」にも出演中。