皆さまから寄せられたお悩みと、それに対する瀧波ユカリさんの回答をお届けいたします。
明るく生きたいのに、不安が先立ちます
今後の人生のすべてにおいて不安です。お金の面も、結婚できるのか、家族の介護はどうする、果てには日本どうなるのか。。。。。ということまで、考えて暗くなります。
そうゆう性格だといわれると、それまでですが、私が非正規雇用だからというのも、理由の1つにあると思います。先生も以前インタビューで「夫が仕事を辞め、自分が大黒柱となった時にプレッシャーを感じた」とおっしゃっておりましたが、当時どうやって心を落ち着かせていたのでしょうか。根本的な問題の解決にはならなくても、気持ちだけは明るくいたいものです。
(ハヤシ)
ハヤシさん、こんにちは!
「今後の人生のすべてにおいて不安」、わかります! 一字一句私も同じように思って今までずっと生きてきました!
…というと「でも瀧波さんはもう結婚して子どももいて仕事も軌道に乗っているじゃないか~!」と言われそうで不安ですが、でも事実です。仕事のモチベーションが急に消え去ったらどうしようとか心配してもしょうがないことを考えちゃうし、ちょっとお腹が痛かったら「きっともうだめだ、長くない…」とか思うし、書店に行くと「大ヒット御礼! 累計500万部!」とか書いた無数の帯が目に飛び込んできて倒れそうになるので、漫画コーナーの前を通る時は目を閉じます。いつかすべてを失い小さいアパートで一人暮らしになっても大丈夫なようにものを減らさないと…と歩きながらぼんやり考えていたりもします。書いていて怖くなってきた。こんな自分の状態を書いたらみんなが不安になっちゃいそうで不安だよ!
でも、そんな私だからこそ「不安な時にどうやって心を落ち着かせていたのか」という質問には答えられます。心を落ち着かせる、というか一時的に不安をやわらげる、ごまかす、気分を変えてしまう、そういうやり方です。『臨死!! 江古田ちゃん』の中に「だましだまし生きてやる」という江古田ちゃんのモノローグが出てきますが、私もだましだまし生きるのは得意なのです。
具体的には、自分は不安になりやすい性質だと理解し、それはそれでヨシとした上で、自分の心から不安を引き離すコツをたくさん用意しておくことです。そのコツとはたとえば、以下のようなものです。
・ストレッチやヨガをして呼吸を深くする
・鏡の前で笑顔を作る
・ポジティブシンキングの本を読む
・ひたすら歩く
・いい香りのクリームを全身に塗る
・両手で両耳をつかんでぐるぐる回してマッサージする
・ブラシで頭皮を全体的に梳く
・気に入っている歌を歌う
・変な動きで踊ってみる
どれも簡単で、思い立ったらすぐできるものばかりです。不安な気持ちに陥っている自分を発見した時、「おっとあぶない、不安に引っぱられているではないか。なんかやろう」と気持ちをスイッチして、その時にできそうなことをやります。
上のリストアップを見るとわかりますが、どれも何かしら体を使っています。私の場合、何かを思うだけとか、考えるだけといった方法では、不安を引き離すことはできません。でも声に出すとか、書くとかすれば、それは体を使ってやること。「大丈夫。なんとかなる」と声に出して唱えたりすることはあります。
襲い来る不安感に対して、こうした小さな行動で太刀打ちできるのかというと、それをやっている間はだいぶ太刀打ちできちゃいます。ストレッチしながら悩むのってけっこう難しいし、踊りながら弱音を吐くのも意外とできません。ただただ、体を使うことによって頭から不安を追い出して、時間をかせぐという感覚です。
そうして不安をいったん追い出すと、「あれ、そんなに深刻になるほどのことでもなかったな」と気を取り直せるし、体を動かしたらスッキリしてちょっと前向きになれることもある。そんなふうにして日々やりすごして生きています。
ちなみに、こういう気分転換のための行動は心理学の用語で「コーピング」と呼ばれています。自分が実践できるコーピングの数はあればあるほどよいと本で読んだので、100個くらい紙に書き出してみたことがあります。できることが100個ある!とわかると、それだけでもけっこう安心材料になります。コーピングについては伊藤絵美さんの『セルフケアの道具箱』という本がおすすめです。
あと、こうして体を使って気分を上方修正することを、不安がなくてもとりあえず朝起きてから1時間以内にやると習慣づけるのも、とてもおすすめです。我々のようなナチュラルボーン不安民の気分って、放っておくとじわじわとどこまでも下がっていく傾向があるので、朝にガツーンと上げておく。そうすると、長い一日もけっこういい感じで過ごせるような気がします。
最後に。「根本的な問題の解決にはならなくても、気持ちだけは明るくいたいものです」というハヤシさんの言葉に、一字一句同意します。もう、本当にそう。それ。筆で書いて壁に貼りたい。濡れ雑巾みたいにグズグズになっている時も、ちょっっっとだけがんばって体を使ってコーピングをして、「明るくいる」をやっていきましょう。応援しています!
次回の更新をお楽しみに!

漫画家。札幌市に生まれ、釧路市で育つ。日本大学芸術学部を卒業後、2004年に24歳のフ リーター女子の日常を描いた4コマ漫画『臨死!!江古田ちゃん』でデビュー。現在、 『わたしたちは無痛恋愛がしたい』 を連載中。そのほか、「ポリタスTV」にて、「瀧波ユカリの なんでもカタリタスTV」にも出演中。