男性が苦手、性的なことが苦手で生きづらい

『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』『モヤる言葉、ヤバイ人』などで知られるアルテイシアさん。毒親問題からフェミニズムまで、ヘビーな内容もストレスフルな現象もコミカルに楽しく分析してくれるコラム。今回は「男性恐怖症」と「性嫌悪症」についてです。

 

性被害の影響で男性や性的なことが苦手になる人が一番多い

男性が苦手、または性的なことが苦手で生きづらい。

そんな悩みを読者の女性からよくもらう。「自分は男性恐怖症/性嫌悪症だと思う」と書いている人も多い。

その中には子どもの頃に男子からいじめられた人もいるし、父親から暴力を振るわれた人もいる。

一番多いのは、幼い頃になんらかの性被害に遭った人だ。

「小学生の時に図書館で痴漢に遭ったせいで、男性と二人きりになるのが怖い」
「中学生の時に路上で男に抱きつかれて、今でも男性に近づかれるとパニックになる」

そんな悩みが山盛り寄せられるのがつらい。さらにつらいのは、彼女らが「たかが痴漢ぐらいで過剰反応ですけど…」と書いていることだ。

「性被害に遭ったことがあるか?」という質問に「痴漢も性被害に入りますか?」と返す女性は多いという。

バナナもおやつに入りますか?みたいな返しをしてしまうのは、社会のせいだ。性被害を軽視する社会に生まれて「たかが痴漢ぐらいで大げさに騒ぐな」と刷り込まれてきたからだ。

性暴力は心に深い傷を残す。性被害にあって外出できなくなる人、通学や通勤ができなくなる人、鬱になる人、命を絶ってしまう人もいる。

『失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック』から一部を引用する。

『性暴力被害による精神的な影響は大きく、多岐にわたります(略)。それを示すデータの一つが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症率の高さです。

PTSDは、生死に関わるような危険に直面したり、そうした現場を目撃したりして、強い恐怖を感じるトラウマ体験をしたときに現れます。

一定期間たった後もその記憶が自分の意志と関係なく思い出されたり、つらさのあまり現実感がなくなったりします。特定の症状が残り、大きな苦痛をもたらして社会的機能をさまたげているような状態です。

(略)米国の調査によれば、レイプされた人がその後PTSDを発症した割合は女性45.9%で、身体的暴行(21.3%)、自然災害や火事(5.4%)などの出来事よりも高くなっています。男性にいたっては65%と突出して高く、戦闘体験(38.8%)を上回ります』

性被害に遭った影響で、男性や性的なことが苦手になるのは自然な反応なのだ。

犬に噛まれて大ケガした人は、犬が怖くなって当然だろう。「すべての犬が噛むわけじゃない」と頭ではわかっていても、反射的に不安や恐怖を感じるだろう。

 

トラウマからの回復には適切なケアを

トラウマの影響の出方はさまざまである。

「男性に近づかれるとパニックになる」「職場で普通に話すのは平気だけど、男性と2人きりになると怖い」「普通に話すのは平気だけど、体に触られると怖い」「男性から好意や性欲を向けられると怖い」等など、いろんなパターンがある。

トラウマの影響で性的なことを避けるようになる人がいる一方、「トラウマの再演」といって、自らの性を軽んじるような行動、過剰な性行動を繰り返す人もいるという。

無鉄砲ビッチだった私もひょっとして??と思い当たるふしがある。興味がある方は「トラウマの再演」で調べてみてほしい。

こうしたトラウマからの回復には、適切なケアを受けられたかどうか?が鍵になる。

トラウマ治療の本にも「トラウマ体験後に支えてくれる味方がいたか? 1人で抱えなければならなかったか? がもっとも大きな影響を与える」と書いている。

たとえば、事故に遭って大ケガしたのに「こんなの大したことない」と無理をすると、傷は治らないどころか悪化してしまう。

心の傷も同様、適切なケアが必要なのだ。自分もケアが必要かも?と思う方は、性被害者のためのカウンセリングを検討してほしい。

こちらのサイトには性被害に関する相談機関が載っているので、参考にしてほしい。

meandyou.net

私がよくおすすめしているのは、精神科医の水島広子さんが書いた『対人関係療法でなおすトラウマ・PTSD』という本だ。この本にはトラウマの仕組みや、そこから回復する方法をわかりやすく解説しているのでヒントになると思う。

 

男性や性的なことは苦手だけど、良きパートナーに恵まれた方も

「男性や性的なことが苦手だけど、信頼できるパートナーがほしい」という相談もよくもらう。

また同じような悩みを抱えながら、良きパートナーに恵まれた経験者の話もよく聞かせてもらう。

彼女らは「まずはなるべく安心できる場所でリハビリして、男性と接することに慣れていった」と振り返る。

「女友達に誘われてボランティアサークルに入りました。そこは穏やかで真面目な男性が多くて、はじめて男友達ができました。その中の1人とお付き合いして、結婚に至りました」といった報告も寄せられる。

経験者いわく、男性と付き合うことになった場合「相手が自分のペースに合わせてくれるか?」が鍵だという。また「自分はこういうことが苦手だ」と説明することも大切なんだとか。

たとえば手や肩などに触られたり、体の距離を縮められるのが苦手な場合、無理して合わせるのはしんどい。でも避けるような態度をとると「嫌われてるのかな?」と相手は不安になってしまう。

だから「自分はこういうことが苦手だ」と説明して、理解してもらうことが大切だという。

そこで自分が話したいと思って、相手も理解してくれそうだと思ったら「過去にこういう経験をして…」と説明するのもいいだろう。

とはいえ、過去の性被害を語るのはとてもつらい(とてもつらい)。被害がフラッシュバックして、パニック状態になってしまうこともある。

なので直接言いづらい場合は、LINEやメールなどで伝えるのがおすすめだ。文章にした方が言いたいことを整理して伝えられるし、相手も何度も読み返して理解を深められる。

 

こちらのペースに合わせてくれるかで、相手の愛情や人間性がわかる

経験者の1人はこんな話を聞かせてくれた。

「彼に事情を説明して、リハビリに付き合ってもらいました。まずは政治家みたいな握手から始めて、手をつなぐ→ハグ→添い寝とじょじょに段階を踏んでいきました。

結局、キスしてからセックスに至るまでに1年以上かかりました。私が慣れるまで待ってくれた彼に感謝です。

そんな彼の態度から愛情や優しさや真剣さが伝わって、結婚しました。おかげさまで今とっても幸せです」

尊い(尊い)。

こういうノロケ話はどんどん聞かせてほしい。こんなんなんぼあってもいいですからね。

こちらのペースに合わせてくれるかどうかで、相手の愛情や真剣度や人間性もわかるもの。

個人的には、ガツガツ系の男性は難しいかもな~と思う。石の裏に潜んでいるような、奥手系の男性がいいんじゃないか。

ちなみにうちのアナルガバ夫はゴリマッチョだが性欲薄夫で、ガツガツ感が皆無だった。

付き合って半年ほどたった時、私から「そろそろどうだい?」と迫ったら「早すぎない?」と返されたので「ちゃんと大切にするから」と説得してさせてもらった。

私は体目的の詐欺系ヤリチンにさんざんな目に遭ってきたので、体を求めてこない夫といると安心できた。

結果的に過去の傷つきが癒されたので、夫婦はマッチングですなあ…と実感している。

 

彼のことは大好きなのに、セックスするのが苦痛で悩んでいた方の解決法

「夫婦ともに性的なことが苦手なので、一度もセックスしたことがありません」という夫婦を何組か知っている。

カップルの形は人それぞれ。体以外でつながっている夫婦は精神的なつながりが深くて、家庭円満なケースが多い。

双方が納得していれば、セックスしようがしまいが自由であり、他人が口出しすることじゃない。

「夫婦はセックスするべき」と押しつける連中には「滅!!」と唱えて、木魚で頭をカチ割るのがおすすめだ。

書きながら木魚が欲しくなってアマゾンで調べたら、バチと布団の3点セットが1429円で売っていた。

木魚をほしい物リストに保存しながら続けると、以前、20代の女性読者からこんな話を聞かせてもらった。

彼女は特に思い当たる理由はないけど、子どもの頃から性的なことが苦手だったそうだ。

「下ネタを聞くのも恥ずかしい」そうで、そんな方が私のコラムを読んでくれるなんて…と感動した。

友達から交際に発展した彼氏は愛情深く優しい人で、彼女の心の準備が整うまで待ってくれた。

だがいざセックス解禁すると、ガツガツと勢いよく来られて白目になった。彼のことは大好きなのに、彼とセックスするのが苦痛で悩んでいる。

と相談をいただいて、私は彼に素直な気持ちを伝えることを提案した。

その後、彼女は勇気を出して彼に気持ちを伝えた。すると彼は真剣に耳を傾けて「今までごめんね、話してくれてありがとう」と言ってくれたという。

そして彼女のペースに合わせて、彼女の負担にならないように、ゆっくりと丁寧にことを進めてくれた。

そんな彼に対して信頼と愛情が深まり、「初めて幸せな気持ちでセックスできました。セックスっていいものだな、と素直に思えるようになりました」と彼女は語ってくれた。

その言葉に「世の中、捨てたもんじゃねえな」と全アルテイシアが号泣した。

女性を傷つけるクソバカ野郎もいるが、信頼できる優しい男性もいる。そのことを傷ついた女性たちが実感できる機会があればいいなと思う。

次回は「過去の恋愛で傷ついて生きづらい」というテーマで書きます。

 

 

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